Wadeye(Port Keats)の70年代のKenbi。ほっそりとしていて内部の空洞が狭く、イダキを小さく細くしたような形状がユニーク。
Wadeyeを中心としたDaly River地域、ダーウィンにほど近いBelyuen、南西アーネ・ランドのBarunga、東キンバリー地域などで広くしられるダンスソング「WANGGA」を研究し続けていたAllan
Marett教授のCD付書籍「
SONGS, DREAMINGS, and GHOSTS
-The Wangga of North Australia」。その中で紹介されている写真(80年代以降のものと思われる)に移っているディジュリドゥを見れば、いずれも細い枝のようなものばかり。つまりこのKenbiとルックスは酷似している!
WadeyeでWANGGAの演奏を見た事がないためはっきりした事は言えないが、写真資料からもこの手の楽器が使われているのは間違いない。また、この楽器のマウスピースの加工の手の込み用、そして二重にペイントされている事からも実際に使われていた楽器なのではないかと思われる。
マウスピースから下4cmほどまでをすり鉢状に広げてあり、そこから下へは直径2cmほどの狭い空洞が続いている。ボトム側もフレアになるように4cmほどがヤスリで削られているだけで、狭い空洞がそのまま徐々にほんの少しだけひろがっているタイトな空洞です。少ない道具で時間をかけて丁寧に作られているのがよくわかる。また、70年代という事もあって木の劣化はそれほどひどくなく、今でも普通に音を鳴らすことができる。
音質は「E」というピッチのわりには硬くて軽めで音域はかなり狭いため、吹いた感じ「F」以上に感じる。バックプレッシャーは高く、吹き込めば吹き込むほど余計に変な音になる。安定したやさしい呼気をタイトに出し続けるという事がもとめられ、それだけに舌の動きには繊細に反応する。
マウスピースの内径は3.4cmとこのエリアの楽器としては小さめで、短い距離ですり鉢状に広げてあるため、実際は2.5cmほどのマウスピースのディジュリドゥを吹いているような口あたりになる。
このようなタイトな楽器でのハミングは思ったよりも難しく、より限定されたツボで演奏されるべき楽器なのだろうと思う。このエリアのディジュリドゥは数が少ないため、今後資料が集まれば、このエリアで使われる楽器の特徴とツボがなんとなくわかってくるのかもしれない。