backnext
Contemporary Master Series 2 : WALUKA-Gurritjiri Gurruwiwi featuring Djalu Gurruwiwi-
Contemporary Master Series 2 : WALUKA-Gurritjiri Gurruwiwi featuring Djalu Gurruwiwi-
NO GARMA002
Artist/Collecter Gurritjiri(Songman) & Djalu(Didjeridu Player) Gurruwiwi
Media Type CD
Area 北東アーネム・ランド
Recorded Year 2001年
Label Yothu Yindi Foundation
Total Time 59:56
Price 廃盤
Related Works
Contemporary Master Series 3 : DJALU Contemporary Master Series 6 : DJALU DILTJIMURRU -Djalu Gurruwiwi- WANGGANY -Didjeridu Unites Us One-    
イダキ・マスターDJALUとその兄GurritjiriによるGalpuクラン・ソング。Bunggul(儀式)形式でその才能の全てを発揮しているDJALUの演奏が凄まじい脱帽の一枚。

■ライナーの翻訳と解説
■Djalu Gurruwiwiディスコグラフィー

イダキ・マスターとして知られるGalpu'クランの長老Djaluと、その兄GurritjiriによるGalpu'クランに脈々と受け継がれてきたソング・サイクル「Waluka(雨)」を収録しています。イダキ・ソロのみが収録されているシリーズ3とは違い、全てイダキと歌のBunggul(儀式)形式になっており、それぞれの曲において歌とイダキのリズムがどう構成されているのかを理解するのには最高である。また全曲Djaluによる伴奏なのもたまらない。

特筆すべきはGurritjiriのハリのあるしめつけるような息の長い歌である。Macassanと呼ばれるインドネシアのスラウェシ島の人々と交易をしていた北東アーネム・ランドに残るインドネシアの言葉の歌が歌えるというGalpu'クランの長老Gurritjiriとその弟Djaluの二人による歌とイダキを21曲収録しています。

Djaluの演奏するディジュリドゥは、他のどのアルバムよりもタイトでスピーディであったり、ゆったりとディープであったりとバリエーション豊かに、また叙情的にそれぞれ曲をすさまじいテンションでフォローしている。やはりBunggul形式だと燃えるのか、個人的にはDjaluのアルバムの中でも最もすばらしい演奏していると感じる。残念なのは、イダキの音量が心持ち小さいという点だが、それを補って余りあるDjaluのすばらしい演奏が収録されています。

下記には8Pのブックレットの中で各曲ごとに3行程の解説がされているライナーの翻訳と、「上記はライナーの翻訳」という文章ではじまる段落には、音の響きから感じた聴感上の主観的な感想と、各曲に特徴的な音楽的構造や、楽器の特徴などのレビューが掲載されています。レビューの部分で書かれている内容はライナーとは全く関係がありません。また、レビュー部分でなされている言及は推測の域を超えるものではないという事をご了承下さい。

■ライナーの翻訳と解説
1-3. Wukun4-6. Guykarri7-8. Rulyapa9-10. Wuduku11-12. Gathaka13-14. Bawang15. Bulunu16. Guykada17. Djongirri18. Yolngu Wawung19-20. Gurrumat'tji
※曲名をクリックするとその曲の解説へ飛びます。

1-3. WUKUN(Cloud)
Wukunとは雲。雲が東からやってきて、大きな風をもたらし、雲が大地を指差しそこに名前を付けていく。オジロワシが雲を追い、カモメが雲に向かって羽ばたき、鳴く。(トラック1 / 4曲)

雲は天高く登り、海、島々、岩、様々な部族の大地を指し示しそこに雨を降らせる。雲から雨が降りて来てさまざまな人々の大地を指し示す。(トラック2 / 3曲)

そして雨がやんだ今、水面はなだらかでガラスのよう。(トラック3 / 3曲)

上記はライナーの翻訳。ゆったりとしたリズムで曲がはじまり、4曲目でテンポ・アップする。5曲目で曲調が変化する。8曲目からはまたテンポ・ダウンする。一番山場になっている5-7曲目がアッパーなリズムと声とトゥーツを多く使用したDjaluの名演奏が聞ける。8拍子のクラップスティックのリズムもシンプルながら渋い。全体として、壮大かつダイナミックな印象を受けるゆったりとしたスピードからミドル・テンポが多いWukunソングのイダキの伴奏は、Djaluらしいヴォイシングの妙を感じさせる。トラック2が中でも一番この歌の音楽的構成の特徴が際立っている。

4-6. GUYKARRI(Dolphine)
Guykarriはイルカの曲。雨がやんだ後、イルカがゆっくりと凪になった穏やかな海を泳いでる。(トラック4 / 4曲)

イルカは穏やかな水面を飛び跳ね、Yirrkalaの岩場を目指す。Djarrak(アジサシというカモメに似た鳥)がイルカ達のまわりを旋回し、イルカの背中にのり、Bremer島のあたりにやってきて、イルカ達は別れて泳いでいく。(トラック5 / 1曲)

一頭のイルカがArnhem湾に向かって北へ泳ぐ。イルカは小魚をおどかし漁をしたり、潜ってカモメを追い払う。乾季の間、雲は海の中に居座っているが、風が吹いて、雲は大地を目指すヤリを形作る。イルカ達は互いの位置を確認しあうために鳴き、どこに向かうか話し合う。イルカのこういった習性から、ヨォルングの人々はイルカを自由の象徴、互いに気づかい、歌う人間(ヨォルング)としてとらえている。(トラック6 / 3曲)

上記はライナーの翻訳。トラック4の1-3曲はゆったりとした曲調で、2曲目と3曲目の冒頭の長く伸ばしたトゥーツがやさしく、美しい。これはGuykarriソングとして非常に特徴的なイダキの伴奏である。4曲目から曲調が変化し、テンポ・アップし、特に後半部分では歌、イダキともに盛り上がる。ソングマンの「Burururururu」という擬音的な声を引き金に、3拍子から4拍子(8拍フレーズが2回)にジャンプする曲中のブレイクとエンディングが激渋で最高!

トラック6には3曲収録されており、その内2曲の前半はクラップスティック無しで、イダキもトゥーツが入らない演奏がされ、ソングマンの「Tirik Tirik」というような掛け声を合図にクラップスティックが入り、イダキはトゥーツが入った演奏に切り替わっているという特徴的な曲構成。

Djaluが最も得意とする曲の一つでイマジネィフィヴかつ音楽的にもリッチなG畦pu'クランの名曲。イルカはG畦pu'クランにとっても最も重要なトーテムの一つである。

7-8. RULYAPA
海水の歌。潮が満ち、海は荒れている。海底の岩に水をたたきつけ、波はこなごなにくずれ、泡立っている。(トラック7 / 7曲)

潮はひき、海辺に打ち寄せる時には、海水が泡立つ。(トラック8 / 6曲)

上記はライナーの翻訳。トラック7の1-4曲はゆったりでディープ。5-7曲でテンポが上がり、クラップスティックのみ細かく刻んでいる。1-4曲目のクラップスティックを4/4拍子で4分(音符)の1拍目だけたたいていると考えれば、5-7曲目では、6連符でクラップスティックをたたいているように聞こえる。一定の短い周期の「Terei-ro Terei-ro」というようなかなりゆったりとしたリズムを繰り返すイダキの音はまさに波を表わしているようだ。

トラック8の1-2曲でさらにリズミックな感じに展開し、パワフルになり、イダキは3連フレーズになる。2曲目後半〜3曲目でトゥーツが必ず入る3連フレーズへと変換され、序所に盛り上がる。4-6曲で山場を迎える。「Tepu Doro Tepu Doro」といった速いトゥーツとドローンが行き来するリズムのスムーズさとパワーはDjaluならではの圧巻の演奏です!ダイナミックさがありながら、美しいトゥーツへと滑らかに切り替わるコントラストが彼の驚愕の演奏テクニックの極みである。

9-10. WUDUKU(Drift Wood)
Wudukuは流木の歌。海は凪いで穏やか。穏やかな海面に流木が浮いている。(トラック9 / 3曲)

潮の干満で、海面は上がったり下がったりしている。流木はそんな海面をただよっている。(トラック10 / 5曲)

上記はライナーの翻訳。トラック9の1-2曲はゆったりした4拍子。3曲目〜トラック10の1-3曲目までは典型的な北東アーネム・ランドに見られる3拍子のリズムでA-B構成になっているリズム・セクションのBの最後のみクラップスティックが入るのが特徴的。

4-5曲は速いテンポの4拍子で盛り上がった雰囲気の曲調に変わる。ここでのイダキはたたみかけるようなスピーディなリズムで、70才を超える老人がイダキを吹いてるとは思えない。『Contemporary Master Series 3 : Djalu teaches and plays Yidaki』(CD 2001 : YYF)のトラック35に収録されているラリーの演奏と比較すると演奏スタイルの違いがよくわかる。

11-12. GATHAKA(Sooty Oysterchacher)
GathakaはSooty Oystercathcer(Sooty Oystercatcher : ススイロミヤコドリ)で、見下ろしながら天高く飛び上がり、島へと渡っていく。Gathak Gathakと鳴く。(トラック11 / 4曲)

Gathakaは島に行く途中で魚をつかまえるために高い所から海に飛び込んでいる。(トラック12 / 3曲)

この曲ではトゥーツの入る場所がすごい。ここで収録されているDjaluのディジュリドゥの演奏はいわばヨォルング的なリズム・センスの極みともいえる即興センスを巧みに生かし、常にリズムのアクセントとなるトゥーツを変化させ、随所にコールを丁寧に入れている。この曲もクラップスティックが入らない前半部分とクラップスティックが入る後半部分に別れておりディジュリドゥの演奏もそれに応じるかのように後半部分を激しくソングマンをフォローしている。特にトラック11の4曲目は前半と後半のコントラストが美しい。

『Contemporary Master Series 3 : Djalu』(CD 2001 : YYF)のトラック24、26、28でもDjaluの息子ラリーによる違うリズムの「Gathaka(ススイロミヤコドリ)」ソングのイダキ・ソロ、トラック51と52でDjalu自身が演奏するイダキ・ソロを聞くことができる。

13-14. BAWANG(Yam)
BawangとはDhuwaに属するヤムイモ。アジサシというカモメに似た鳥「Djarrak」がそれぞれのクランのためにそれぞれの地域について雲間から歌っている。雲がやってきて、人々を一つにする。全ての土地にはそれぞれのクランのための場所がある。雲はまっすぐと前を指し示すヤリで、Yirrkalaを指し、Wessel島を、そしてRirratji\uクランとその他のクランの土地を指し示す。人々のように全ての雲が集まって一つになる。アジサシが鳴き、まるで友愛と自由のように雲は一つになる。雲はヨォルングをあらわし、Djapu, Rirratji\u, G畦pu', そしてDjambarrpuy\uクランが一つであることを表わしている。(トラック13 / 4曲)

雲はちぎれちぎれに別れ、ワイルド・ポテトBawangみたいに見える。それは別のクランで、どこから彼等がやってきたかを表わしている。雲は儀式の後の人々のように別れて自分達の土地へと帰っていく。(トラック14 / 3曲)

上記はライナーの翻訳。非常に哲学的なテーマになっているこの曲を上記のストーリーを頭に思い描きながら聞いていると、1-4曲で雲がゆっくりと一つに形成されていき、残り3曲で雲がちぎれちぎれに切れて離れていく様子を想像できる。北東アーネム・ランドの曲は情景的な曲が特に多いがこの曲はその際たるものだろう。

イダキの演奏は、トラック13ではMorning Starソングの伴奏にも似たゆっくりとしたテンポで、そしてトラック14では、ミドル・テンポでと全体的にゆっくりした演奏である。

15. BULUNU(East Wind)
BulunuとはDhimurruとも呼ばれている東風で、東風は海面をスーっと通り、海面を穏やかにし、積乱雲をつくり出す。人々は凪の穏やかな水面を眺めながら座っている。(トラック15 / 5曲)

上記はライナーの翻訳。トラック13-14の「BAWANG(Yam)」ソングからの流れで演奏しているようなテンポの滑り出しで、ミドル・テンポながら、トゥーツとコールを多用した激しい雰囲気の曲になっている。2-3曲目のトゥーツの切り返しがすばらしい。これだけ自然に一つづつの音(特にトゥーツ)をきれいに演奏するプレーヤーも少ないだろう。

4曲目から変化して特徴的な8拍フレーズのクラップスティックは2倍のテンポに、そしてイダキのリズムも「Tereiro Tereiro Tereio...」といったスピーディなものになる。4-5曲でエンディングの前に合図で使われていると思われる長めのトゥーツが非常に特徴的なフレーズになっている。

16. GUYKADA
雲が水平線の上に居座っている、それは沿岸部に住む海水に関連のある人々を表わしている。(トラック16 / 3曲)

上記はライナーの翻訳。トラック15の1-3曲目の感じに近い。3曲目のディジュリドゥの伴奏では、後半でトゥーツを表拍のみに1小節入れ、裏拍のみに1小節入れてエンディングにつながるというシンプルだが即興的センスを多分に持ち込んだ演奏になっている。

17. DJONGIRRI
Barra(西風)がGoulburn島の方から吹いてきて、ちぎれ雲を吹き飛ばす。そこにいる人々はイダキを吹き、儀式のためにボディ・ペインティングをする。(トラック17 / 4曲)

上記はライナーの翻訳。これはDj*******inyというスペル(特定のイダキを指す言葉なので明記していません)でライナーのスペル・ミスか意図的に変更しているのではないかと思われる。G畦pu'クランにとって神聖なイダキの名前であると推測される。1-2曲目のドローン部分!!明らかに吹き方を変えて演奏している。このイダキのリズムの頭部分のアタック感と倍音は北東アーネム・ランドのものではない。曲が曲だけに非常に意味深だが、これには神聖な秘密があるためここで述べるわけにはいかない。3-4曲目で演奏方法、曲調などが全てガラっと変わっている。

18. YOLU|U MAWAN
ヨォルングの人々は大地と踊とともに歩んで来た。彼等は池に行き、Goulburn島の人々と彼等のためのダンスについて思いめぐらしている。彼等とつながりがあるのだ。(トラック18 / 3曲)

上記はライナーの翻訳。トラック17の3-4は実はこのトラック18なのではないかと思える程、曲調が近い。MawanとはGoulburn島のクランの言語の名前で、彼等はヨォルングとは違う言語を話し、違う文化圏のグループに属している。トラック2と曲の雰囲気が似ている。

19-20. GURRUMAT'TJI(Magpie Geese)
Grrumat'tjiは白黒の色をしたカササギガンという鳥。池のまわりに座ってWater Lilly(睡蓮)の球根Rakayを食べている。(トラック19 / 3曲)

ガチョウは池から池へと移動している。このソング・サイクルはLinygunaとよばれている。(トラック20 / 3曲)

上記はライナーの翻訳。トラック19の1-3曲目のブレイクで「Haa..」というソングマンの声で止まるおもしろい曲。イダキはよく使われる「Tepu Tere Tere」という3拍子のリズムがメインになっている。

トラック20の1-3曲はスピィーディな4拍子。「Kuwa-, Kuwa-」というカササギガンの鳴き声をまねた歌がちょうどブレイクに入る前に入る。ブレイクに入る前のイダキのためをきかせたリズムはあまり聞かないクールなリズムだ。

■Djalu Gurruwiwiディスコグラフィー
・『Contemporary Master Series 2: WALUKA Gurritjiri Gurruwiwi featuring Djalu Gurruwiwi』(CD 2001 : YYF)
・『Contemporary Master Series 3: DJALU-Djalu Teaches and Plays Yidaki-』(CD 2001 : YYF)
・『Contemporary Master Series 6: DJALU -Djalu Teaches and plays yidaki 2-』(CD 2003 : YYF)
・『DILTJIMURRU-Djalu Gurruwiwi-』(CD 2003 : ON-Records)
・『WANGGANY -Didjeridu Unites Us One』(CD 2005 : Dinkum Music)